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「吉良さん。受賞、おめでとうございます。」
「はあ、どうも。」
スーツ姿の知らない男が差し出すワイングラスを受け取る。
男は続いて名刺を差し出した。
「どうか、ひいきにしてください。これ、僕の名刺です。」
「はあ…。」
さっきから何度となく同じ事が繰り返されている。
今日は、俺、吉良たすくの、"人間国宝"として認定されたパーティーだ。
天才陶芸家として認められ、31歳になった今年、名誉ある人間国宝の…なんて、まあ固い話はいいじゃないか。
とりあえず、面倒な事と、人の集まる所が苦手な俺は、このパーティーも蹴ろうとしていた。が、主役がいないわけにはいかないと、無理やりに連れて来られたわけだ。
さっさと帰りたい…それが今の正直な気持ちだった。
笑顔という仮面をつけたスーツの男か、金目当ての香水臭い派手な女。
さっきからそいつらが入れ替わり立ち替わりやってくる。
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