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その娘はまるで迷子になった子供のような目をして、脅え、ただこちらを見ていた。今にも泣き出しそうな相手に対して、私は内心どうしたらいいか戸惑っていた。
「誰、ですか…?」
私の質問に対してゾイド様はくすりと小さく笑った。わかっているんじゃないか、と言う目が…なんだか少し私をいらつかせる。
「陽子だよ。君が面倒を見ることになった。」
ただその一言ですべての説明が済まされた。この娘はきっと『売られて』きて、此処[ソニック]へ来たのだろうということ。
だって見るからにイイトコのお嬢様って見た目に、何も理解をしていない純粋な瞳。彼女は何も知らず連れて来られたに違いない。此処が殺し屋組織、ってこと以外を、ね。まぁ、今のあたしにとって私にはどうでもいいことだけれど…
そう、今はー…
「何故ですか?!何故No.1の私が新人のお守り役なんてやらなくてはいけないんです―…」
と、言う私の言葉は重い視線に遮られた。
『命令は絶対』
そういわんばかりにゾイド様は私を睨みつけていたから、どうしようもなかった。
「祥子。君を見込んでの話だよ。わかるね?」
急に優しく微笑み、彼は私の頬を優しく撫でた。
いやらしい…
こうすれば私が言う事を聞くとこの人は知っているから。愛してもいないくせに、『愛してる』と囁く貴方はずるいのね。私の気持ちも知らず、なんて傲慢な人なんだ。
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