スタート〈2〉

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「つまり、僕は死んでて、あなたは死神で、ここは死後の世界と言う訳ですね」 「……お前、物分かり良いのな」 「自分の目で見たものは信じる主義でして」  まだ夢の中にいる可能性も捨て切れないのだけど。 「じゃあ話の続きと行くか」 「僕が天国か地獄のどっちかに行くって話ですか?」 「あー、それなんだけどよ」  女は言い辛そうに頭を掻く。 「ちょっと待ってくんねーか?」 「待つ?」 「実は、天国も地獄も満員なんだわ」 「はい?」  思わず聞き返してしまった。 「……定員があるんですか?」 「いや、ない筈なんだけどよ。今は忙しいんだ。こないだどっかの国で紛争やら病気が流行っちまったらしくてな、例年よりもこっちに来る奴が多くて多くて」 「はあ、そりゃ大変ですね」  女は分かりやすく肩を落とした。 「大変ってもんじゃねーよ。天使も悪魔も神様も死神様も全然手が足りねーの。天国じゃあ入り口まで五時間待ち、長蛇の列出来てんだぜ、信じらんねーよ」  まるでテーマパークだ。いや、天国ならそこらの遊園地や地獄より人気もあるだろうから、仕方のない話ではありそう。 「ま、そのお陰でオレみたいな奴でも職にありつけるんだけどな」 「正社員、なんですか?」  女は力なく首を振る。 「アルバイト、良くて派遣社員ってところだ。正直、ピーク越えたらクビ切られそうで怖い」  死神も大変だ。何だか、生きてても死んでても苦労するのに変わりはなさそうだな。心底どうでも良くなってきた。 「……で、お前にはピークを過ぎるまで待ってもらいたい」 「別に構いませんけど、どのくらい待てば良いんですか?」 「半年ぐらい」  率直に言って、長い。 「地獄もそれぐらい待たなきゃ駄目なんですか?」 「いや、地獄の方が待ち時間長い。ここだけの話、血の池の詰まりが悪くなっちまってさ。ほら、血の池って人気だから。だから、修理に人手割かれちまって、地獄超やばいんだよ。天国からの応援で天使も血に浸かってんだぜ? きりきり舞い通り越してきりきりきりきり舞いぐらいなのよ」  へー、血の池って人気なんだって事しか頭に入らなかった。 「別に詰まってても良いんじゃないんですか?」  どうせ地獄じゃん。 「馬鹿、常に循環させとかないと汚れが溜まって変な菌が沸いちゃうだろ。病気になったらどーすんだ、地獄じゃ保険効かないんだからな」  どうやら、僕の常識は通用しないらしい。
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