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締め切られたブンジの部屋に、ノックの音が響く。
「あの…ごはん…ここ置いとくから…」
疲れたような、女の声。
じっとPCのディスプレイに向けられていたブンジの目がピクリと動く。
そして、扉の向こう側から人の気配が消えた後、ブンジはのそりと扉を開けた。
カチャ…カチャ…。
薄暗い部屋の中に、食器のぶつかる音が響く。
ブンジはただ、黙って食事を取る。
(俺はいつまでこんな風に迷惑を… いや、いつか必ずきっかけがある… 必ず、あるはずだ… だから、それまではこのまま…)
そう思うと、ブンジはおかずのミートボールをくわえると、刺さっていた爪楊枝を引き抜いた。
「パッジェーロ、パッジェーロ…」
爪楊枝を指で挟み、それを弾いてダーツのように飛ばす。
ブンジの昔からのクセだった。
いつものように楊枝を挟む。
いつものように片目を瞑り、狙いを定める。
いつものように壁の一点を見つめる。
そしていつものようにーーーー楊枝を弾いた。
バチッ…!
刹那、閃光が奔る。
弾かれた楊枝は、軽々と壁に突き刺さり、それがまるで豆腐か何かのように、穴を穿って貫通した。
「は…?」
目を擦る。
しかし、目の前で起きた事実は変わらない。
「何コレ…? どうなってんの?」
ブンジの問いに、答える者は居ない。
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