村上隼人 変

2/10
前へ
/365ページ
次へ
   手紙を書いたら何かが吹っ切れた気がした。  今日は月曜日。恐怖のバレンタインデーだ。朝の待ち伏せは嫌だから、かなり早目に家を出た。  学校についてから勇樹はずっと小さな箱を持っている。藤沢さんから貰った手作りチョコに顔が緩みっぱなしだ。  俺はチョコレートやプレゼントを持って群がってくる女の子たちを迎え撃った。 「悪いけど好きな子がいるから、君たちからは貰えない。ごめんね」  本当の事を言えるのって気持ちいい。 「まさかだけど、村上君の好きな人って竹内七海?」 「そうだよ」 「人殺しですよ!」 「あんな殺人鬼のどこがいいんですか?」 「私たちは絶対に認めません!」  喚く人だかりに揉まれてムッとする。 「俺が誰を好きになろうが、君たちには関係ないだろう? それに好きな人の事を悪く言われるのは不愉快なんだ。もう二度と俺に関わらないでほしいな」  ファンクラブと称する生徒たちに背を向けて、教室へ向かう。途中で何度も声をかけられたけれど、気持ちは少しも揺らがなかった。  
/365ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2534人が本棚に入れています
本棚に追加