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それはつい最近気付いた事だった。廊下ですれ違った一瞬、私は確かに彼に惹かれた。
しかも物凄く強烈に。涙が出そうになるのを必死に堪える程だった。
「マジで? 色恋沙汰には全く興味なかった七海が、ついに恋愛に目覚めた!? いやぁ、それではお祝いも兼ねてドーナッツパーティーだね! 村上先輩の事、たっぷり教えてあげるよ!」
一人でテンションを上げている加奈に、適当に相槌を打って鞄を持つ。ストーカーって言ったの気にしてないな。
一目惚れと言われればそうかもしれない。でもそんな浮かれた気分にはなれない。キャーキャー騒ぐ加奈に苦笑した。
「ねぇ、加奈。村上先輩って彼女いないんだよね。万が一私が村上先輩と付き合う事になってもいいの?」
なーんて。私と村上先輩が付き合うなんて天地がひっくり返ってもあり得ない事だけど。
「おっ! もうそんな事まで考えちゃってるのワケ? あたしはただの美形好きだから、気にしないよ。もし億が一、七海が村上先輩と付き合う事になったら、近くであの顔が拝める訳か。うむ。ストーカー呼ばわりした事も含めて半殺しで赦してあげよう。あたしってイイ奴~!」
あ。覚えてた。カラカラ笑いながら加奈は私の背中を叩いた。
もし私が秘密にしている事を知ったら、彼女はどんな反応をするだろう。
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