花吹雪の蒼空の下

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    水底でも 季節の移り変わりは 分かる。 首を伸ばして 見上げる水面に 溢れる程の光の粒。 今日こそ 水から上がってみようか? そう思っても 重い腰は上がらなくて。 リマの思い出を偲びに あの家 に入ってく度胸はついたのか? そう思う度に気持ちは萎えて。 更に 時は流れて、流れて。 もう どのくらい経ったか、判らない。 やっとの思いで水から上がる事は出来た、が。 湖の畔に うずくまってしまう。 水底でクヨクヨしてた 長い長 い時間は すっかり家が朽ちる 程 長かったのか。 腐った材木が崩れて 汚い小さな木屑の山が残るばかり。 思い出の家は 失われていた。 それからの俺は 夜は水底に沈 み、昼間は 湖畔で昼寝をする。 ダラダラと繰り返す 毎日。 ある日 軽い足音が聞こえた。 水竜の居る湖、と 人も動物も 避けて通るというのに。 迷い込んだか? しかし 足音は真っ直ぐ 俺の方に向かって来てる。 ……イイ度胸だ。 余程 俺を怒らせたいらしいな。 足音の主を確かめようか と、 薄目を開けかけた処で 甲高い 声が降って来た。 『あんた、ドラゴンなんでしょ!  あたしと契約しなさい!!!』 聞き覚えのある台詞に 弾かれた様に顔を上げると。   懐かしいヒヨコ色の頭。 勝ち気そうな緑の瞳。 『断る。ガキの守りは嫌いだ。』 そう言ってやると女の子は、今 にも泣き出しそうに顔を歪めた …戻って来たんだ、な? 不覚にも 今 見ている風景が、 ぼんやりと 滲んで 困った。           《完》      
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