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「信じられない話しだが、俺の友達が見たらしい」
「……」
響は黙って聞く。
「真夜中のテレビ――」
「し、心霊モノなら止めたってや。ワイ苦手なんやから」
いきなり割り込んだ響。声が若干おかしかった。
「……子供か」
千律はそんな響を横目で見ながら普通にツッコんだ。
「当ったり前やん。まだ17歳やで、ワイは」
響は否定しない。笑いながらそう言った響は事実17歳。だが、その言葉には二つの意味があった。
一つ目は、人が皆持つ勘。
響は昔に覚えがあるような、千律が話すモノと出会ってはいけないような、そんな気がしたからである。
二つ目は、千律と自分がいつも会う時は〝相談〟
誰にでも自分の話を聞いてほしい相手とはいるものである。千律にとっては響、響にとっては千律。
自分達が会ったのは約一ヶ月ぶり。だから、折角会ったのだから、たまには普通に遊んでみたい。いきなり暗い雰囲気は止めようと、後からでもいいじゃないかと、そういう彼なりの配慮である。
そんな言葉は自然に千律へと伝わり。
「確かに」
ハハと、二人に笑みがこぼれ春の雰囲気が戻る。そして、響は千律が言う前に。
「まあそないな話し後でもええがな。急用ちゃうんやろ? とりあえず仕事の打ち合わせと飯でも済まそうや」
「ハハ、そうだな」
千律もそれに納得した。
そう、彼等は仕事の間柄でもある。響の口調が所々若くないのも社会人だから。千律も同じく、彼等は高校に行ってない。
そして、当たり前のように響は気付いてない。
先程響が自ら止めた話しは……後悔や謎として、彼に纏わり付く。
京都で、春一番の嵐が起こるのはこれからである。
「ほな行こか」
「ああ」
そんな事を知るよしもなく、彼等は腰を上げその場を後にした。
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