特異への第一歩――〝邂逅〟

6/6
前へ
/15ページ
次へ
「信じられない話しだが、俺の友達が見たらしい」 「……」 響は黙って聞く。 「真夜中のテレビ――」 「し、心霊モノなら止めたってや。ワイ苦手なんやから」 いきなり割り込んだ響。声が若干おかしかった。 「……子供か」 千律はそんな響を横目で見ながら普通にツッコんだ。 「当ったり前やん。まだ17歳やで、ワイは」 響は否定しない。笑いながらそう言った響は事実17歳。だが、その言葉には二つの意味があった。 一つ目は、人が皆持つ勘。 響は昔に覚えがあるような、千律が話すモノと出会ってはいけないような、そんな気がしたからである。 二つ目は、千律と自分がいつも会う時は〝相談〟 誰にでも自分の話を聞いてほしい相手とはいるものである。千律にとっては響、響にとっては千律。 自分達が会ったのは約一ヶ月ぶり。だから、折角会ったのだから、たまには普通に遊んでみたい。いきなり暗い雰囲気は止めようと、後からでもいいじゃないかと、そういう彼なりの配慮である。 そんな言葉は自然に千律へと伝わり。 「確かに」 ハハと、二人に笑みがこぼれ春の雰囲気が戻る。そして、響は千律が言う前に。 「まあそないな話し後でもええがな。急用ちゃうんやろ? とりあえず仕事の打ち合わせと飯でも済まそうや」 「ハハ、そうだな」 千律もそれに納得した。 そう、彼等は仕事の間柄でもある。響の口調が所々若くないのも社会人だから。千律も同じく、彼等は高校に行ってない。 そして、当たり前のように響は気付いてない。 先程響が自ら止めた話しは……後悔や謎として、彼に纏わり付く。 京都で、春一番の嵐が起こるのはこれからである。 「ほな行こか」 「ああ」 そんな事を知るよしもなく、彼等は腰を上げその場を後にした。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加