19人が本棚に入れています
本棚に追加
物語の幕を開いたのはたった一人の天才だった。
男は数少ない特異能力研究者の一人。
世に色々な研究がある中、何故特異能力に絞ったかというと……それは愛する我が娘の為。
男の娘は特異能力者だったのだ。
特異能力者は世に数える程しかいない。実際その存在は認識すらされない、いや――認識は〝出来ない〟
――〝希少種〟
あらゆる対象の的となるからだ。人と掛け離れた能力を持つが故に……。
人とは掛け離れた能力を持つが故に、
その日々苦渋に
その日々苦難に
その日々苦悩に
憂鬱に愛される日々。
世界は娘を受け入れない。
娘は世界に馴染めない、馴染もうともしない。
だから、男は願ったのだ。
世界に特異を認めさせる。
特異の発現を実証する。
娘が世界に馴染むのではない、
世界が娘に馴染めばいいのだ。
と…………。
だが、研究はまったくと言っていい程前途多難。
原理もわからない、この世の理論も役に立たない。研究は費用と疲労を重ねるだけ。
愛する娘を実験材料に、男の精神は限界に近づいていった……
その日々苦渋に
その日々苦難に
その日々苦悩に
そう、男も憂鬱に愛されていた。
そして、転機は皮肉な形で訪れる事となる――
最初のコメントを投稿しよう!