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物語の幕を開いたのはたった一人の天才だった。
男は数少ない特異能力研究者の一人。
世に色々な研究がある中、何故特異能力に絞ったかというと……それは愛する我が娘の為。
男の娘は特異能力者だったのだ。
特異能力者は世に数える程しかいない。実際その存在は認識すらされない、いや――認識は〝出来ない〟
――〝希少種〟
あらゆる対象の的となるからだ。人と掛け離れた能力を持つが故に……。
人とは掛け離れた能力を持つが故に、
その日々苦渋に
その日々苦難に
その日々苦悩に
憂鬱に愛される日々。
世界は娘を受け入れない。
娘は世界に馴染めない、馴染もうともしない。
だから、男は願ったのだ。
世界に特異を認めさせる。
特異の発現を実証する。
娘が世界に馴染むのではない、
世界が娘に馴染めばいいのだ。
と…………。
だが、研究はまったくと言っていい程前途多難。
原理もわからない、この世の理論も役に立たない。研究は費用と疲労を重ねるだけ。
愛する娘を実験材料に、男の精神は限界に近づいていった……
その日々苦渋に
その日々苦難に
その日々苦悩に
そう、男も憂鬱に愛されていた。
そして、転機は皮肉な形で訪れる事となる――
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