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「レッド・アイ【緋蔑の眼】」
リーダー格の横にいる若い男が着けているサングラスを外し、目をカッと見開いた。
すると、大きな封筒がその緋き瞳に写された瞬間――燃え盛った。……そして燃え尽きた。
「契約書がッ、今のはまさか――!?」
「特異能力、我等が探し当てた特異能力者だ。この意味が分かるかね?」
男は微笑しながらそう言った。意味は、契約書が無くなった今、貴方には選ぶ事も手段も無いと。
「……私に、引く以外の選択肢は無いと……」
白衣の男は力が抜けたように、両手を付いてひざまずいた。だが同時に思った。
これで案外良かったかもしれない。特異の研究など雲を掴むような話し、また一からやり直して娘と幸せに暮らそうと、普通に。
しかし、そんな男の思いはまたもや儚く散った。話しは止まらない。
「そうだ。だが安心したまえ……君の夢は我等が引き継ぐよ、夜乃内博士――」
男がそう言って夜乃内博士に見せたのは、先程燃えた封筒と同じ物。つまり男側の契約書。
「担保の娘と一緒に……」
人の悪意が姿を現した瞬間だった。欲望に浮かぶ笑みと共に。
「貴様ッ!? まさか娘――
「レッド・アイ【緋蔑の眼】」
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