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――大阪――
「というのが、私の十年前の過ちさ……。私は娘を愛するあまり、娘を傷付けていた、娘を護れなかった。その時、初めて気付いたよ。不幸の対極にあるものは幸福じゃない。不幸を知った者が望むのは幸福じゃない。
〝普通〟
普通こそが愛しいんだと…………」
「そうか……なんや、可哀相な話しやなぁ」
時刻は夜の7時15分、街灯に照らされガード下に座り込む二つの影、
ホームレスとダメ人間。
「……君、前から思ってたけど、信じてないよね?」
「当ったり前じゃボケェー! オッサンワイと出会うてからその話し何回しとんねん! そりゃワイかて初めは信じとったで? ああこの人可哀相やなぁ思うとったで?
でもよくよく考えたら、博士号取る程の奴が何でホームレスやっとねん! おかしいやろ!? しかも特異能力って何やねん!? あれか? 得意能力の事言うてんのか!?…………全部信じ難いんじゃボケェー!!」
話し合ってる所を見ると、二人は余程仲が良いようだ。
「……いつもながら、よく一気にそれだけ喋れるね。でも酸素の無駄遣いはよくないよ~、酸素だって高いんだから」
「ワイは、低級なボケだけにはツッコまん」
そんなダメ人間を見たホームレスは嬉しそうに手を叩き。
「さあ、次はどんなホラ話しを聞きたい?」
「やっぱ嘘やったんかいッ!」
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