憂鬱な世界は始まる

3/5
前へ
/15ページ
次へ
「ハハ、これもいつもながら、君と話すと飽きないね。だから君に惹かれたのかもしれない……」 「うっわぁ、気色悪ぅ~。――って、言いたいとこやけどな。なんや? 本題があんのやろ?」 ダメ人間はホームレスの急に変わった神妙な雰囲気を汲み取り、真剣にそう言った。 それを聞いたホームレスはハハッと苦笑いながら頷いた。 「君と私が出会ってから半年、私はいよいよホームレスを抜け出すよ。今までしがないホームレスの戯言に付き合ってくれて有難う」 素直に今迄の感謝を語るホームレス。ダメ人間に手を差し延べる。 「……そうか。よかったな。まあワイも楽しませて貰ったからお互い様や」 二人は握手した。そして、二人の手がそっと離れると。 「ダメ人間、最後に聞きたい事がある」 「なんやホームレス」 「さっき言った特異能力。もし――そういう特別な力があれば、君は欲しいと願うかい?」 その時のホームレスの雰囲気、ダメ人間には何とも言えない感じがした。 「…………願わんな」 「何でだい?」 「何……と、なくや」 「そうか」 「ホームレス、ワイも最後に聞きたい事がある」 「何だい?」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加