2/2
前へ
/35ページ
次へ
 耳障りな蝉の鳴き声と、真上からの暑い日差しにうんざりしながら、ただ足を進める。  学校の制服に身を包まれたその体は、すでに耐え難い暑さを感じ、汗を吹き出して、脇や首もと、下着をむれさせる。  時刻は午後一時程だろうか。  私は学校から家への、決して長くはない帰路をたどっている。  しかし、この暑さでは、この道は延々と続いているのではないかと思わせる。  不意に、背後に気配を感じた刹那、白い軽トラが私の脇を走り抜けていった。  生暖かい風が、栗色の長い髪と、膝のあたりまでのスカートをなびかせる。 (暑いな……)  幾度も繰り返された言葉が、また脳内に現れる。  夏の高い日差しと蝉の時雨を受け、汗に体を濡らしながら、家へと向かう。    それは、誰にでも起こりうる日常。  そして、これから起きる、幾度もの邂逅もまた然り。  ありふれた日常、ありふれた出会い。  私と彼女との物語……。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33人が本棚に入れています
本棚に追加