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 八月二日、夏休み中に学校へ行くのは、自習室が開放されたからだ。  自分の家では、小学五年生になる弟とその友人らが遊びに来ており、集中して勉強などできない。  ましてや、夏休みの課題は多量にあり、県内でトップクラスの高校への進学を考える私には、空調設備の整った静かな空間はうってつけだった。呼べば先生も来てくれる。  せっかくの夏休みを勉強で過ごすような真面目な生徒は、私以外にいないだろう、と、思ったのも理由の内に入る。  やはり、勉強は一人でした方が効率は良いだろう。  しかし、私が自習室へ入ると、すでに先客がいた。    彼女は見たところ三年生。つまり先輩だ。  夏だというのに病的な程に白い肌、染められた感じのある黒髪。  日光のとどかない部屋の隅で、ひっそりと座っている姿に、私は不気味さを覚えた。  何より気味が悪かったのは、私が扉を開けた際、彼女と目があったときだ。  突然現れた私に驚いたのだろうか、目を一瞬だけ合わせ、すぐ下を向いてしまった。  その時見えた、彼女の淡紅色の瞳が、私のなかに今も印象強く残っている。  カラーコンタクトというものなのだろうか。  なら何故そんなものを付けて学校へ?
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