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「おっせーぞ! 命、零」
「ごめん。亮」
「ごめんね」
僕と命はリビングのソファーに座っていた亮と恵に謝る。
亮はきっちり染め上げた黒髪を短くシャギーカットしている。
元々は茶色だったのだが、不良と間違われるのにうんざりして黒に染めたらしい。
だが、生え際は僅かに茶色が戻ってきていた。
肌は日に焼けてやや黒い。
活発な亮らしいや。
恵は艶やかな黒髪を長く伸ばし、縁無しの眼鏡をかけている。
恵はコンタクトよりも眼鏡が似合うな。
うん。
それなりに夏の日の元にいるのだから、少し位焼けていも良いと思うのだけど、恵の肌は白い。
日に焼けない体質なのかな?
「三人とも、挨拶はそれくらいにして、早くゲームしよ。零、持って来てくれた?」
「もちろんだよ。恵」
僕は、鞄の中から一つのゲームを取り出す。
「これが……精神世界キスカか……よく手に入ったな。これ。発売からもう一ヶ月立つのに未だに売り切れてんだろう?」
実はこれを開発したのは僕の父さんの会社。
でも、僕は買うまで知らなかったんだんだよね。
「父さんが……くれたんだ。『受験勉強で忙しいだろうが、これでもして息抜きしろ』ってね……」
「「「……」」」
受験勉強と父さんから貰ったと聞いて三人は複雑な表情を浮かべた。
ずっと一緒だった四人の内、僕は私立の高校、後の三人は公立の高校に行くことが、ほぼ決定している。
しかし、私立というのは僕が自分で決めたのではなく、勝手に決められていた為、僕は勝手に決めた親や、親類達に反発しているのである。
僕は皆と一緒に公立行きたいのに……
それと、三人は僕と父さんが仲が最悪に悪い事を知っている。
僕には……
兄さんがいた。
すっごく優秀な兄さんが。
しかし、その兄さんがいたから僕はいらない人間という事を知っていた。
その為、僕は度々家出を繰り返し見つかる度に連れ戻されるという事を繰り返した。
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