文久三年【初夏】

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    街に向かって全力疾走する腰に差した二刀は一見大刀と脇差に見えるが実際手にすれば分かる 大刀は四尺五寸の大太刀菊一文字 脇差は二尺八寸の打刀堀川国広 信じられない長刀なのだ、重さだって相当だ 「本庄!!一体どういう事なんや!!」 「言ったでしょう?殺されるんですよ赤沢守人さんが!!」 「せやから、その理由は何や言うてんねん!!」 「知りませんよ!!」 「何やそれ!!あほか!!」 「明かされてない、これならいいですか!!」 私と山崎さんは走りながら叫ぶ 角を曲がった時だった 橋の上に提灯の光がちらついた 「あれ赤沢ちゃうか?」 「山崎さん誰かいます」 屋根から追う山崎に話し掛けたのは島田魁 確かに赤沢よりもかなり後ろだが人影が見え監察方は即座に闇に潜むのを感じた 見えた!! 角屋の提灯を持った男、赤沢守人 そして、提灯の光が反射してその後ろに鈍く光る鐵 ガキィン!!!! 私は菊一文字を抜き様に赤沢守人の提灯を斬り捨て対峙した 新見錦と 「本庄!?な、何故貴様!!」 「何故?それは此方の台詞でございます!!赤沢守人殿は同士でございましょう!?」 「ひっ!?ああああきょ局長…!?」 ギリギリ… 鉄同士がにじり合う気味の悪い音が目の前で聞こえる 「早く屯所へ!!」 「チッ…赤沢斬れ!!この者は不逞浪士だ!!」 新見が完全に敵として宣戦布告を私に申し付けた 「ふ…不逞…浪、士?」 赤沢守人と私は全く面識が無い、見ず知らずの人間と浪士組局長どちらを信じるかなど目に見えていた
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