文久三年【初夏】

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    赤沢守人が震えながら刀に手を掛けると私は素早く刀を払い間合いを取る はっきり言って今は三つ巴に成り兼ねない そんな時ようやく前川邸の隊士達が到着した一足遅れで土方さんと近藤さんも来た 「新見局長…私を不逞浪士と仰いましたね?私は京都守護職会津藩御預かり壬生浪士組筆頭局長芹沢鴨殿の傍付き小姓本庄祿でございます。私を敵と申された新見殿には既に浪士組に於ける座などございません。弊隊士に対する抜刀行為及び闇討ち…浪士組に対する不逞と見為すに相応しい」 未だ赤沢守人は訳が分からないまま刀に手を掛けていたが前川邸の隊士が見えると走って助けを求めた とうとう新見は顔面蒼白で刀を握る手を震わせた 私の後ろには前川邸近藤派浪士組隊士が近藤さんと土方さんを先頭に三十名近く控えている 勿論、近藤さんと土方さんも訳が分からないが間違い無く好機と見ているのだろう止めに入る様子は無い 「近藤君!!土方君!!何をしている!!この女を早く始末しろ!!」 「新見錦、往生際が悪い…御用改めでございます、御静粛に!!」 私は叫んで右腕を広げながらしならせ新見に向かう 新見が刀を受け止める為に上段に構えた キィィン!! 刀が触れ合い鈴よりも遥かに高い音が響く 「ただの打刀で受け止められる程八千流は優しくない…」 ザリ…… 「ひぃっ!?」 鉄が摩擦により斬れる音がする 「斬り捨て御免」 ザリザリ……バツン!! 金属の擦れ合う音の後 芯のある肉厚な… 例えば肉体が切断される様な… そんな音が聞こえた
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