平成十九年【秋】

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    嫌な予感はよく当たるもので… 寺の門前に黒のワンボックスカーが三台止まっていて寺の住職の奥さんが恐怖やら何やらでパニックで私に駆け寄る。 「祿ちゃん!!大変透君と幸人君が、主人まで!!警察が!!警察が来ないの!!」 「奥さん絶対中に入らず此処で警察と救急を待ってて下さい」 道場からだいぶ離れた普段は駐車場の隅に早めに来ていた生徒達が泣きながら蹲っていた。 「怪我は!?奥さんの傍にいろ!!何かあったら全員で逃げろ!!」 「師匠!!助けて!!透と幸人が死んじゃう!!」 何だって言うんだ!! 死ぬだって!? 道場の入り口に入ると中には笑い声や怒鳴り声とかなり酒の匂いが強かった。 戸を開けた瞬間… ビュン!! 「っ!?」 体勢を低くして中に転がり込む、頭上を鉄パイプが通り過ぎた。 中に入って言葉を失った。 住職と透と幸人は道場の中心に横たわり道着は赤く染め抜かれていた。 「オネーサン誰?俺達と遊んでくよね?」 下品な笑いが耳にまとわりつく。 透と幸人は木刀を握ったまま意識が無い。 住職は近くの竹刀を拾ったのか折れていた。 「どーじょーやぶりー!!イエェェェェ!!」 男達はゲラゲラ笑いながら酒瓶を投げ合う。 「道場破り?君らが?」 「そーでーす!看板なんていらねぇからオネーサン貰って帰ろっかなぁ?」 しゃがんで住職や透と幸人の脈を確かめる。 殴られて気絶してるだけの様で少し安心し住職の握っていた折れた竹刀を道場内を取り囲む二十人近い男達の一人に向かって顔面に叩きつけた。
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