文久三年【夏之弐】

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    一刻程経ち本庄祿の呼吸が大分落ち着くと部屋に駆け付けた永倉新八は一番大きなため息を吐いた 「左之、一体どういう事だよ」 「……わかんねぇ…」 原田左之助に言える訳も無かった 永倉新八と同じ神道無念流を扱う壬生浪士組筆頭局長芹沢鴨を闇討ちにしようとした所に本庄祿が血塗れで倒れ、芹沢鴨率いる芹沢一派幹部が既に皆殺しにされていた等とは 近藤勇と土方歳三は念には念を押しいくら試衛館時代からの好とは言え芹沢鴨と同じ神道無念流の永倉新八を連れて行く気は無かったのだ 「分かんねぇで済むと思ってんのかよ」 「本当にわかんねぇんだよ!!」 永倉新八の苛立ちに原田左之助が声を荒げた 二人の言葉は通じている様で擦れ違ったものだった 永倉新八は何故血塗れの本庄祿を原田左之助が抱き抱えて来たのか分からなかった 原田左之助は何故芹沢一派が皆殺しにされ本庄祿が血塗れだったのか分からなかった 本庄祿を中心に永倉新八、原田左之助、近藤勇、沖田総司、土方歳三、山南敬助が時計回りに座っていた 「……っ…コホッ……」 喉を詰まらせた様な小さな咳をすると本庄祿は微かに瞼を開いた
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