文久三年【夏之参】

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    まるできっちり間合いを見計らったかの様に話が切れれると障子が開いた ドンッ 人がぶつかるにはかなり強い音がして本庄祿の体が全く見えなくなり痩せて骨張った背や肩が見える 「お迎えに上がれず申し訳ございません」 「怪我は…怪我は無いか」 擦れて震えた声は切なく部屋の空気は一変した 「何処も」 「そうか…もう逢ったのか?」 「いえ、まだ」 本庄祿の返答に感情が許すままに抱き締めていた腕を解いた 「まだ?…まだとは、逢ってないのか?あの餓鬼の所へ行ってないのか?」 向かい合う野口健司は驚愕を絵に描いた顔をしている 「はい」 「馬鹿者!!!!何をしている!!!!私などと逢う暇があればあの餓鬼の元へさっさと行かぬか!!!!」 かつて八木邸で本庄祿は野口健司に何度か怒鳴られたが過去最大級の声量に思わず固く目を閉じた 口を閉じる間も惜しいのか野口健司は片腕で本庄祿を肩に担ぎ上げ立ち上がる 「ちょっと野口さん待って下さい!!」 沖田総司は指し物目を剥いて野口健司の背中を掴む 「そんな暇は無い!!」 「本庄さんは怪我こそありませんが心臓を患っていらっしゃるんです!!もう少し静かに!!」 沖田総司は一瞬の間に野口健司の腰に腕を回してなんとか踏み留まろうとする 「心臓を患っている?本庄が?」 丸々復唱して漸く野口健司は本庄祿の異変に気付いた 本庄祿は野口健司に縋り着く様にしっかりと着物を掴み顔を歪めて荒い呼吸を繰り返していた 「本庄さん!!」 「本庄…?」 野口健司は横抱きにして本庄祿を確かめるも返事は無く只、痛々しい表情で口を開閉させている
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