文久三年【夏之参】

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    「お前、いつから…」 布団に横たわる本庄祿を目の前にして野口健司は顔を覗き込む 「生れ付きだそうですよ」 目を開けない本庄祿の代わりに沖田総司は布団を掛け直しながら答えた 「では、此処に来た時は既に?」 「えぇ…」 「馬鹿者…何故もっと早く言わないのだ…今も本庄は自分で此処へ来た訳では無いのか?」 野口健司は静かに本庄祿の頬に残る返り血を撫でる 「はい、角屋での一件後本庄さんは一度姿を消されました、私達は気になって深夜八木邸へ様子を伺いに行くと首の無い芹沢筆頭局長の御遺体の下に横たわっていたんです」 沖田総司は見たままを野口健司に話す 「芹沢は死んだのだな」 「えぇ、確認しましたが野口さん事情はご存知ですね?この事は御内密に…」 正座したまま沖田総司は野口健司に向き直ると両手を着いて頭を下げた 「私の所為だ…芹沢が死んだのも本庄がこんな風になったのも、全部私が死にたくなくて本庄にやらせた事だ……私は本庄を裏切れない同様に本庄も又私を裏切れない、生き延びた私に唯一遺された至宝…守らねばならない」 野口健司は本庄祿の髪を梳き頭を撫でた
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