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土方歳三は野口健司に昼間の退室を禁じようとしたがその必要は無いと悟った
野口健司は本庄祿の手を握り座ったまま眠った
浪士組の夜明けと共に眠る二人の部屋を何処にあてがおうか土方歳三は頭の片隅で考えていた
深夜、行灯の光が切れ掛けている中やっと本庄祿は目を覚ました
「………野口、殿」
「なんだ、目が覚めたか」
少し辺りを伺う本庄祿は寝呆けているらしかった
「本庄君、具合はどうだい?」
一刻程前に沖田総司と入れ替わりで部屋に来た山南敬助は眼鏡を押し上げで本庄祿に問い掛ける
「山南さん?……あぁ、はいもう大分良くなりました」
山南敬助を見て漸く一連を思い出し此処が何処で自分が何をしていたか思い出す本庄祿
「丑三つを過ぎた位だまだ寝てろ」
「え?丑三つ?今日はいつですか?」
野口健司の言葉に混乱したのか本庄祿の日本語もあやふやになる
「本庄君、落ち着きなさい、今日は八月二十日だ、私は近藤さんと土方君を呼んでくるよ」
無理も無いと山南敬助が苦笑いのまま部屋を出た
「野口殿…」
「私はお前を疑った事など一度も無い」
本庄祿の言葉を遮り野口健司は口を開いた
「お前がどんな嘘を吐こうと私はお前を信じる、だからお前を疑った事など一度も無い…だけどな、お前を不安に思う事は何度もあった」
野口健司は俯き正座をした膝の上の手に力を込める
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