文久三年【夏之参】

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    カラカラと音を立てていた手がピタリと止んだ 「……これが?お前この不思議な荷物と言い海の向こうでも行った事があるのか?」 野口健司は本庄祿の手を取るとしっかり薬の入ったケースを握らせて携帯や手帳、ペンや財布等を訝しげに見つめる 「確かに私は何度か海の向こうへ行った事がありますが、野口殿…無理に信じろ等とは言いませんが私は百五十年先の日の本より参った人間です」 本庄祿は真っ直ぐに野口健司を見ているが当の本人は理解の範疇を完全に越えただ本庄祿を見ているだけだった 近藤勇や山南敬助、土方歳三は以前に聞いた話で荷物の中身からして俄かに信じ難いとは言えなくなっていた 「…そうか」 野口健司は少し視線を落とし静かにそう呟いた 「野口殿?」 「いきなりそんな滅茶苦茶な事を言われて信じられる程私は柔軟な理解力をしていない、ただお前の言葉として信じただけだ……だ、第一!!お前は何もかもが滅茶苦茶なんだから信じる他無いだろう!!」 半ば逆ギレと言うやつだ 野口健司は本庄祿の話の内容云々ではなく本庄祿自身を信じていると言ってしまった自分が恥ずかしかったのだ 「あははっ…すみません」 「謝る位なら笑うな馬鹿女」 可笑しそうに笑う本庄祿と顔を真っ赤にして外方向く野口健司に土方歳三と山南敬助は少なからず驚いた
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