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「透は、元気ですか?」
「え?…あぁ今はとても元気だよ」
「透の所へ行って参ります」
山南敬助の返事を聞いた本庄祿は突然立ち上がった
「ま、待ってくれ!本庄君、今はまだ…逢う時では無いと思うんだ」
山南敬助は慌てて出入口の戸の前に立ち塞がる
「何故ですか、芹沢と新見の遺体を確認に来た日、透は私の名を叫びました…何故逢えないのですか?」
近藤勇と土方歳三は前川邸にあの日響いた早阪透の声がまさか邸を出てかなり経った本庄祿に届いているとは思わなかった
「…っ!?…本庄君、お願いだ、もう少し待って貰えないか?早阪君はずっと一人きりで君を待っていた、でも長過ぎたんだ…今、君達が逢えばきっとお互いを傷付け…」
「山南総長、行かせてやって欲しい、一人きりだったのは本庄も同じ、貴方達が隠したい何かを本庄は知らなきゃならない…本庄、お前も行くと言った以上は覚悟を決めろ」
山南敬助の話を割って入ったのは野口健司だった
「近藤局長も山南総長も土方副長もお前を想っての事だ、それでも行くと言うなら何があっても逃げるな、それが怖いなら此処から出るな」
野口健司は本庄祿の真後ろに立つ
「逃げません、逃げたくありません…もう他人の事で遠回りもしたくありません」
本庄祿の視線は目の前に立つ山南敬助の向こうに居る只一人想い続けた人を求めていた
「なら、行ってこい」
静かに戸が開き半年振りに前沢邸の邸内を歩く本庄祿の姿を何人もの隊士が見ていた
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