5136人が本棚に入れています
本棚に追加
/554ページ
何の迷いも無かった
ただ、透に逢いたかった
透も私と同じ気持ちであって欲しいと願ったのは私の我儘だ
でも、あの日の透の声が頭に体に心に焼き付いて消えてはくれない
喉を詰まらせて擦れ悲鳴にも似た透の私を呼ぶ声
その声だけが最後の最後まで私をこの場所へと導いた
目指した部屋は私が居た頃は何時も開け放たれていたのに今は閉めきられている
日の高さからして午前十時になるかならないか位で朝食はとうに終わっていて、寝ている訳の無い時間帯だった
いざ、部屋の目の前に立つと空恐ろしさが心を波立たせた
何故、山南さん達があそこまで私と透が逢う事を止めたのか…どうしても分からない
一瞬の間、そんな事が頭を過った時、視界に人影が映る
「…………」
「………透…」
目の前に現れたのはずっと焦がれた透だった
バシッ!!
咄嗟だった
何が起きたか分からないけど体は条件反射で右腕を盾にした
やっと我に帰れば私は庭に膝を着いていた
「…透?」
「黙れ」
パニックを起こし掛けている
目の前にいるのは誰?
今、私を殴り飛ばしたのは誰?
その瞳に私が映ってないこの人は
一体誰ですか?
最初のコメントを投稿しよう!