文久三年【夏之肆】

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    透の瞳に映っていたのは紛れもない人殺しだった 「師匠は強いんだよ!!お前みたいに人殺さなきゃ何も守れねぇ様な奴じゃねぇ!!」 「私はそんな風に映っていたんだね…」 「知った様な口聞くな!!ムカつくんだよ!!人殺さなきゃ何も守れねぇ位ならお前が死ねば良かったんだ!!」 私が、死ねば良かった 「分かっているよ、あの日も今もこれから先もずっと私は何度だって、あの時私だけが死ねば良かったと思い続ける…刀が無きゃ何も守れないんだ、私は弱いんだよ……だから、誰かの命を奪って、自分の何かを失って最期にこの手に何も遺らなかったとしても…透が生きているならそれでいい、それが私が望んだ事だから」 本当だよ 透が頑固で曲がった事が大嫌いなのは良く知ってる だから、きっと…もう私を呼んでくれる声を聞くことは出来ないのは分かる 透の綺麗な記憶の中の本庄祿はもう何処にもいないから 私が新見や芹沢達と一緒に殺してしまった だけどね、私の中の早阪透は今もこれからずっと先、眠りに就くその時まで変わらずに居るんだよ 目の前に立つのは間違いなく透 誰か分からなかったのは私が血で汚れてよく見えなくなってしまったから ごめん、透 「最低だな」 「そうだね」 「失せろ」 「嫌だ、話を聞いてくれるまで動かないと言った」 「ふざけんな!!!!俺はお前の話なんざ聞く気はねぇ!!」 「なら、聞いてくれるまで待つ、ずっと待つ」
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