文久三年【秋之壱】

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                何故、山南さんが知っている? この質問は八月十八日に芹沢を斬る前私が芹沢に問い掛けた事だ 「ほ、本庄君?どうしたんだい?私は何か不味い事を言ってしまったかい?」 唖然と隣に座る山南さんを見つめる私に慌て出す 「何故、山南さんがその言葉をご存知なんですか?」 「その言葉?何の言葉だい?」 「誠とは如何なもので何処にあるか」 「え?言ってる意味がよく分からないんだが、ただ私は…私の誠が何なのか本当は自分でも分かっていない様な気がしたんだ、君は何時も真っ直ぐで迷いが無い、君の誠は誰が見たって分かる位の物だから……だから、君に聞いてみたくなったんた」 偶然… 山南さんはやっぱりあの夜を知らなかったんだ 「そうだったんですか、私の思い違いでした…すみません」 私は山南さんに気取られぬ様に詫びた 「いや、気にしないでくれ…昔の好で近藤さんや土方君にはとてもじゃないが話せなくてね…」 山南さんは膝に肘を付くとそのまま掌で顔を覆った 「私は、人を殺した人間です…でも、其処に誠はありました……それを理由にしてはならない事は分かります。でも、誠が無ければその人間は生きていたかと聞かれれば肯定は出来ません。ならば…別の誰かの刀が汚れるなら生い先の無い私が背負う方が誰かの為になると思いました」
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