文久三年【秋之壱】

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    「それが山南さんの誠でしょう?自分の命を軽んじる人間に生きる資格が無なければ他人の命に裁決を下す権利も無い…山南さんが自分の命を蔑ろにした時、それは士道不覚悟と見なし私が山南さんを斬る……山南さんは間違っていない。他人の命を迷う事は大切な事です、迷わなくなった時はもう人とは言いません、山南さんは鬼になってはいけない」 「本庄君、教えてくれ…君が現れなかったら私は、芹沢さんを斬っていたかい?」 「はい…斬っていました」 「君はその未来を知って私達の代わりに刀を抜き大切な物を失ったんだね?」 「そういう言い方は好きではありません、これは私と透の問題です…誰かの所為ではありません、私が透の大切にしていたものを奪ってしまったが為に私も大切な透を失ってしまった、だから山南さんには関係ありません」 「私はこれからもそうやって誰かに局面を委ねてのうのうと生きていくんだ」 「刀を抜く事が全て打開する策ではありません、山南さんには山南さんのやり方がある、大切なものを失うのは弱いからだ、でも諦めない限り負けでは無い、私は諦めない…失ったならもう一度手繰り寄せて見せる……山南さんの誠は何時だってしっかりその手に握られてるじゃないですか、だから私の元へ来たのでしょう?自分の正直な気持ちと命に対する想い山南さんはまだ見失って無いから此処まで来たんです、不安と迷いは違います…私にだって不安くらいありますよ」 私はため息混じりに笑って返す 「すまない…」 「山南さんが謝る必要は無いんです」 「……ありがとう」 「どういたしまして」
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