文久三年【秋之弐】

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    「それでも、私は諦めたくありません…透を絶対諦めたくないのです」 小さく擦れた声のその言葉だけは強くはっきりと聞き取れた 本庄祿の意思は強く沖田総司がどうこう出来る事では無かった 「分かりました、でも…私は本庄さんにもし、もし万に一つ何かがあったら早阪君を許せなくなる、それだけは知っておいて下さい」 沖田総司は本庄祿の返事も待たずにすっと立ち上がると足早に自室に戻って行った 本庄祿は分かっていた 自分に死期が差し迫っている事に 肉体の終焉よりも 断ち切れた絆が終焉を迎える方が余程恐ろしかった 早阪透を想ったまま逝けるなら志半ばでも善いとさえ思った 吐いた吐息は僅かに曇る 秋は短く冬は長い 重ね合わせた両の掌に温もりは宿らない 忘れ咲いた紫露草 一蓮托生 沈み逝く身は君想へばこそ 手放す事もたふとばんかな
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