文久三年【冬之壱】

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    間合いを開け合った二人の呼吸がピタリと止み一瞬で空気が張り詰める さすがの組長達も息を呑み二人を見据える 激しい打ち合いを初めて直に半刻 早阪透がとうとう腰を落とし首を擡げる様にかなりの低姿勢で下段に構えた 「早阪君やるのかな?」 「宴会の夜の本庄に似ている」 藤堂平助は少し俯き斎藤一を見ると彼はわずかに一言だけ返した 島原の夜、早阪透に対し抜刀しようとした新見錦に本庄祿はあの姿勢を見せた 「おやおや、野口君まさか出来るのかい?」 「あいつは真面目な奴だった、皆が剣術しかやらない中、百合元先生の元で只一人一から鍛練に励んでた、出来て当然だ」 興味津々の武田観柳斎を横目で睨む様に永倉新八は静かに口を開いた 野口健司も又左肩を引き膝を曲げ低く姿勢を保ち顎を引いて早阪透を睨む 中条流で抜刀術を扱えるのは本庄祿と三ツ屋幸人と早阪透のたった三人 平成の世界には中条流は宗家意外残っていないのだ 神道無念流を扱えるのは数多といるが北辰一刀流居合術は扱えても神道無念流居合道を修得した者は創設当初の室町時代以来いない 二人は静止する 間合いは四尺 極めて至近距離の帯刀姿勢 居合い抜刀術 御波延明流基中条流抜刀術 神道無念流居合道 両者目録 トンッ カァン!!!! 「…………参りました…」
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