文久三年【冬之壱】

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    本庄祿は何も言わず二度早阪透の背を撫でると起き上がろうとした 「師匠、駄目だ!!まだ寝てないと!!」 布団に押し戻そうとする早阪透の手を遮り体を起こすと何度か咳払いをし口を開ける本庄祿 「と……る、よく…き、け」 声は枯れて聞き取りにくいが、体が極端な休養を取った為に僅かに声帯が戻った 「私は、人を…こ…した… 許せ…か……た 新見が…許…な…った と…るに……刀、向けた 芹…わが、許せなか…た 私から…と、おる…とろ…とした 私……と、るが…いな…世界で……生きて、いけない 私の…すべ…て、だから もし、も……又、誰かが……とおるを、取ろう…したら、私は……何度…でも、刀を……抜く」 途切れ途切れの言葉は真っ直ぐに早阪透を射貫く 「なんでだよ……なんでそんな事言うんだよ!!」 早阪透の大きな手は本庄祿の両肩を握り締める 「失いたく、無いからだ!! 守り…いんだ…死に…くないんだよ 透…隣で生きていたいんだよ 信じたものを貫きたいんだよ 私は…死にたくない この心だって、死なせたくない そうまでして、生きる私が強欲の罪だと、言うなら地獄にだって喜んで逝くよ」 それは言葉では無ければ会話でもない 本庄祿の誓いだった 自らの全て 早阪透を守る事 それが本庄祿の誠
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