文久三年【冬之壱】

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    「違う!!そんなん師匠じゃねぇ!!あいつだろ!!野口の所為だろ!!なぁ師匠!!」 本庄祿の肩を掴む手に更に力が籠もる 「透…それは、違う……野口殿は……一番…私を守り……とお、るに逢わせようと……自分の居場所を失う事すら……躊躇わなかった」 「何言って……そんなんあり得ねぇ!!師匠は利用されたんだ!!新見や芹沢を殺す為に利用されたんだ!!だって野口は赤沢を殺そうとしたんだろ!!」 「なら、何故、芹沢が死ぬよりも早く野口殿は死を選んだ…?…芹沢は私に野口殿を殺させ様としていた野口殿はそれを知った上で、私に刀を握らせた……野口殿は、私の所為で居場所を失ったんだ」 本庄祿は視線を下げ固く拳を握り締めた 「どうして……分かんねえよ…なんで野口が、あいつは他人だろ?初めて逢ってからまだ半年だろ?……なぁ師匠、たった半年で人は人の為に持ってるもん全部捨てられるのかよ…?」 早阪透の瞳は必死に本庄祿を求め彷徨っていた 「分からないよ私にだって……でも、私は透達と初めて逢った時から何があっても私がこの子達を守るんだと決めていた…野口殿が私達をそう思っていてくれたかは私には分からない……でも、人が人を守りたいって思う事は間違った事じゃないし、決心に時間は関係無い」 「誰かを殺さなきゃ誰かは守れないの?」 「刀が全ての守りじゃない…でも、振り下ろされる刀は事実だ、その刀から守る為に必要なのはやっぱり刀なんだよ……でも、透、お前と幸人にはしっかりと伝えた筈だ…守りの刀の意味を知れと……間違えるな、守る為の刀は理不尽な暴力や虐殺じゃない、己が身を守ってこそだと でも、人を殺す事は辛い 一生背負うんだ、その覚悟が無いなら…逃げろ、それも私はきちんと教えた筈だ」 確かな力で本庄祿は早阪透の瞳を捉えた
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