文久三年【冬之壱】

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    「師匠は…背負ってるの?」 「あぁ…とても重たくて逃げ出したくなる…新見や芹沢、平間に平山……それでも、生きなきゃいけない、償いなんて綺麗事をするつもりは無いよ、だからせめて、彼等を殺してまで繋ぎ留めた物を手放すなんて事は絶対にしない……私は決めたんだ ごめん…透、私は透の想いを裏切る」 「…師匠………馬鹿だ、すげぇ馬鹿だよ!!!!全然良い事なんてねぇじゃん!!俺やあっちに残ってる道場や此処にいる奴等の為にしか聞こえねぇよ!!師匠には何にも良い事なんてねぇよ!!ただ辛いだけじゃねぇか!!」 早阪透は布団に座る本庄祿の膝に額を押し付けて大声を上げる 「馬鹿、勝手に私が辛いだけなんて決め付けるな…透が笑っているなら私はそれでいい、私が信じた人達が生きていてくれるならそれでいいんだよ、私は十分幸せだよ……透、覚えてる?初めて江戸時代に来た夜、透が私にそう言ってくれたんだよ……透が私の為にその命を懸けてくれたんだよ ありがとう、透」 早阪透は確かにそう言った 死んだら何も無いと言った本庄祿に 師匠が笑ってなきゃ俺は何にも良くない…と 本庄祿はずっと伝えたかったのだ 人を殺す事 命を懸ける事 人を背負う事 人を守る事 命の意味 早阪透が一番よく知っていると言う事をずっと伝えたかったのだ
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