文久三年【冬之壱】

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    「もう、透の師でいる事は出来ないね…」 「……ふざけんな……ふざけんな!!どうしていつもいつもそうやって勝手なんだよ!!!!勝手にいなくなって勝手に怪我して勝手に誰かに仕えて勝手に誰か殺して……勝手に突然帰ってきて……今度は勝手に師匠辞めるって?………マジでふざけんな!!!!それだけは絶対に許さねぇ!!俺は師匠以外認めねぇ!! あいつが言ってた、師匠は何も変わってねぇって 俺、恐かった…師匠が人を殺したって聞いた時、師匠が師匠でなくなった様な気がした もう、前みたい優しい師匠には戻ってくれないって思ったら恐かった でも、確かにあいつの言う通りだった…いつも人の事ばっかで、すげぇ優しいのに自分には馬鹿みたいに厳しくて…信じらんねぇくらいに頑固で……そうやって又俺の事ガキ扱いする、撫でんなつっただろ、俺もう十六なんだよ……… ごめん、師匠、ごめん、ごめんなさい…俺、酷い事言ったごめんなさい…死なないで……頼むから死なないで」 顔を押し付けたまま布団を握り締める早阪透の頭を本庄祿はいつもしている様に撫でる 「行こうか、透…野口殿、待ってるよ」 「……はい…」 廊下にはいつの間にか組長達や副長、局長が集まっていた 誰も何も言わず、ただ二人を見ている 信じる力が強い余りに反発しあってしまった思いが漸く元の在るべき姿に戻った 今はただ、その事に安心を感じていた
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