文久三年【冬之弐】

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    「……は?」 声はそこらじゅうから聞こえた 「は?じゃありません、私が直談判で返して頂きます、私は野口殿を水戸徳川に譲った覚えは無い」 本庄祿の瞳はまだ見ぬ水戸徳川家を見据えていた 「お前、何言ってんだ…」 「本庄、お前正気か?」 「本庄さん、よく考えて下さい」 土方歳三と永倉新八は呆れ沖田総司は本庄祿が血迷ったと思っているが、他の組長達もさながらそんな物だった 「水戸徳川…越後桑名藩本庄の龍爪の御紋を知らないとは言わせない」 本庄祿の言葉にやっと土方歳三と沖田総司は気が付いた 「そんな道理が通用するのか?」 「相手は本家では無いとは言え徳川家ですよ!?」 「道理も何も自分達が言い出した事ですから、私が何を恐れる必要がありますか、彼等の首は縦に振る為にあるんですよ」 薄らと笑みを浮かべる本庄祿に恐ろしい物を感じた 早阪透は知っている、本庄祿が本当に怒っている時、彼女はそれすらも楽しむかの様に少し笑む癖があった 徳川宗家に仕える越後中条家は本庄を名乗り本庄家の龍爪の御紋を表向きには使う 龍爪の御紋…それは本庄家が越後の武将たる証 越後の龍……上杉公に仕える時、家紋を変えた 今、この江戸時代では徳川宗家の寵愛を受けた一族の証 ただ、徳川宗家だけに仕える証
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