文久三年【冬之弐】

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    「ごめん、師匠もう一回言ってくんね?俺の頭が悪いの?師匠の頭が悪いの?」 「背負い投げと上段回し蹴りと正拳どれがいい?」 質問した早阪透に対し本庄祿は笑顔で質問を返した 室内に入っていた近藤勇、土方歳三、永倉新八、藤堂平助は条件反射で後退りする 「いやいやいやいや、待って師匠、本当に待って!!ちょっ寄るな!!こっち来んな!!」 部屋の壁際まで逃げる早阪透が本庄祿を避ける為に突き出した手を掴み素早く体を懐に潜り込ませると ダァァン!!!! 僅か一瞬で早阪透の体が宙を舞い、布団の上とは思えない音で沈んだ 「お前が龍爪の紋を着るんだ、返事は?」 「…はい…」 病み上がりの意味が分からなくなる程度には本庄祿の体力は回復していたと理解は出来た 「じゃぁ本庄君、君はどうするんだね?」 早阪透の返事を確認し着物の合わせを整える本庄祿に近藤勇は恐る恐る問い掛けた 「私は何でも結構です、何方かの紋付き羽織袴を貸して頂きます」 特に気にした風も考えた風も無く返事は返ってきた 「何でもって、謁見に何でもは不味いんじゃ?」 山南敬助は廊下から顔を覗かせ背中を擦る早阪透を見てから本庄祿を見た 「家紋とは家柄の象徴、東北や信越といった北陸道や東海道方面で龍紋の家はまずいないんです…たぶん本庄家だけかと、北の龍紋は幕府守の意、徳川宗家でもない者が下手に手出しできる家じゃないんです、だから藤紋が無い以上は同行する中で一番弱い者に着けさせるのが定石でしょう、水戸徳川家は絶対に透に不詳は働けない、私は透の付きの者に成り済ませば良い」 本庄祿ははっきりと言い切った
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