文久三年【冬之弐】

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    本庄祿はニコニコしながら楽しそうに話出した 「野口殿はさ、透にすごく似てるんだ…不器用なんだけど真っ直ぐで、人にも厳しいけど自分にはもっと厳しい人なんだ……」 「俺が!?野口と!?」 早阪透はあからさまに嫌な顔をした、何と無く分からないでもない、自分と似た人間など早々好きになれる物ではないし、況してや今の状況で言われても喜べるものでは無い 「似てる似てる!怒ると直ぐに顔と態度に出て、何をするにも力加減が無いし無愛想で仏頂面、機嫌が良いのか悪いのか分かんない」 「似てるって言われた後に野口の詳細なんて知りたくねぇ…」 まるで自分がそうだと言われてるのと同じでいい気はしないが、本庄祿は平成の世界に居た時の様な何の心憂しもない笑顔を見せ早阪透は黙ってくれとは言えなかった 「でも、誰よりも優しくて誰よりも私を甘やかしてくれたよ、こんな私の為に命も居場所も捨ててくれる…そんな人で、本当に透にそっくりだった」 本庄祿はまるで昔を思い出す様な口振りで話す 「じゃぁ俺とは違うじゃん…」 「なんで?」 早阪透は自嘲気味に笑い口を開いた 「野口は師匠を傷付けたりしなかった」 ゴツッ!! 「いぃってぇ!!」 「勝手に決め付けるなと何度言ったら分かる、私はお前に傷付けられた覚えは無い!!」 容赦無い拳骨と共に怒声が早阪透の頭に響く
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