文久三年【冬之弐】

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    翌朝、小春日和で本庄祿の体調はほぼ万全と言えた 「では、行って参ります」 先陣で一刻早く山崎烝は出立し京の外れで本庄一行を確認次第行商を装い水戸までの道順を先を行く形での案内となった 早馬を走らせると、山崎烝と思しき人物を発見し本庄祿と早阪透、土方歳三は後に続いた 日が暮れる頃、近江と美濃の境に着き旅籠に入る その間、三人には会話は無く重い空気が流れていた 「土方さん、少し話があります…廊下へ出て頂けますか?」 「………」 土方歳三は無言で立ち上がり部屋を出る 「透、此処に居て……部屋の目の前にいる」 早阪透が本庄祿を求める様に見ると一言付け加えた 「土方さん、野口健司は脱走しました…これは紛れもない事実です…新撰組隊士の御法度、処するのが決まりですよね?」 「当然だ」 「私は野口殿を助ける為に行きます、死なせるつもりは毛頭ありません」 「だからなんだ?隊士の御法度を見逃せってか?」 「勿論、そうして頂ければ私は何の心配もありません…でも貴方の立場を持ってしても貴方自身の考えでも亡き者にするのが安泰とお考えですよね?」 「だったら?」 「野口殿は徳川幕府御側御用取次方で預かります」 「何故そうまでする?」 「私の全てを守って下さったからですよ」 「そうじゃない、一般の新選組ならの話をしてんだ」 「…はぁ?……よく意味が分かりません」 「お前の方が分からねぇよ、野口健司は近藤さんや山南さんや俺の預かる隊士じゃねぇって言ってんだよ」
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