文久三年【冬之弐】

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    「土方さん、全然意味が分かりません…隊士じゃないってどういう事ですか?」 自分から話を切り出したのに全く以て内容を見失った本庄祿は隣に立ち廊下の高欄に手を掛け中庭を見つめる土方歳三の顔を覗き込む 「野口は芹沢の部下であり芹沢が捨てた部下だ、その上で不逞浪士野口健司として捕縛はした、お前が前川邸に運ばれて来て野口と会った後、あいつは自分でお前を選んだ、言ってる意味は分かるか?」 土方歳三が横目で本庄祿を見る 「新撰組隊士として赤沢さんの事件を取り扱ったのでは無く、一度除隊させ一介の浪士として捕縛したと言う事ですか?」 本庄祿は一つずつ確認しているのか眉を潜める 「俺達が除隊させたんじゃねぇ芹沢が捨てたから除隊になったんだ、捕えたのはお前で捕縛しろっつったから捕縛し禁固した」 土方歳三は何の感情も示さない顔で視線を庭に戻す 「だから新撰組隊士ではない?」 「それも違う、あいつはお前が眠った後、自分の事は本庄に全て預けてあるから本庄に決めさせると言った」 本庄祿は驚愕の余りに土方歳三を凝視する 「野口殿が?」 「お前の話を全て聞き事情を知る組長以上の者で話し合った結果、新撰組隊士本庄祿預かりとして野口健司を新撰組に留める事を決めた、だから俺達の預かる隊士とは違う、お前が決めんだよ」 こんな屁理屈こじつけの道理があるだろうか 本庄祿は言葉も無かった 「あいつはよ、芹沢殺しの責任を全て自分が負うからお前を詮議に掛けないでくれ、早阪の所に戻してやってくれと頭を下げたんだ……どうして、そんな野口やお前を詮議に掛けられるってんだ…」 ため息を着いた土方歳三は呆れた様な顔で微かな笑みを浮かべていた
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