文久三年【冬之弐】

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    部屋に入ると言葉通りに土方歳三は隣の部屋で就寝した様で姿は無かった 行灯の傍でする事も無く座っていた早阪透は本庄祿の姿を確認すると笑みを浮かべて手招きをした 「どうしたの?寝てて良かったんだよ?」 本庄祿は不思議そうに首を傾げる 「待ってたんだよ、手…」 「手?…ちょっと待った!!」 袖を引く早阪透に手を差し出すとかなりの強い力で手首ごと引かれて倒れ込んだ 「師匠の手、冷たい」 早阪透は本庄祿を抱き留めるとそのまま膝に座らせ後ろからその小さな両手を包んだ 「そ、外に居たからだよ…ほら、寝るからもう放せ」 昔から早阪透は何の気なしに本庄祿に飛び掛かってみたり抱き付いてみたりとスキンシップと言う名の悪戯擬いが激しかった、だが今日は何と無くいつもとは違う事に本庄祿は少し緊張し居心地の悪さを感じていた 「ねぇ師匠…師匠は俺の師匠だよな?」 早阪透は包んだ手を解くと細く柔らかな体を腕の中に閉じ込め本庄祿の小さな背中に顔を押し付ける 「透?………そうだよ、どうしたの?」 「どっか行ったりしないよな?」 「しないよ…」 「うん………うん」 何度も頷き頬を擦り寄せる
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