文久三年【冬之弐】

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    本庄祿の前を走っていた土方歳三が並走する様に速度を緩めた 「本庄…おかしい」 「人が減りましたね」 眉を潜める土方歳三に視線を向ける本庄祿 此処は東海道 前後に人が居ないなど人為的であるとしか言えない 直ぐ様馬を停めて本庄祿は早阪透に駆け寄った 「透、羽織を脱いで寄越せ」 「うん」 「本庄急げ」 「土方さん透を連れて三河を目指して下さい…私が足留めします」 馬に乗りなおす二人を余所に羽織を着て来た道を見つめる本庄祿 「何言ってんだ!!さっさと行くぞ!」 「これは私の問題です、二人を巻き込む訳にはいきません」 急かす土方歳三と聞く耳を持たない本庄祿に 「俺は行かない」 馬から降りたのは早阪透だった 「馬鹿何してる!!早く土方さんと行くんだ!!」 「嫌だね」 「透!!!!」 「行かねぇ!!!!」 本庄祿の右手が振り上げられた時だった キィィン 馬を降り本庄祿を擦り抜けた土方歳三は和泉守兼定を抜いた 「本庄来たぞ!!」 怒鳴り声に本庄祿は素早く早阪透に背を向け腰を沈めピタリと早阪透にくっつく 右手の山に見える人影が意識を拡散させる 土方歳三は刀を凪ぎ払い大きく飛び退く はっきり視界に映るのは五名 虎視眈々と狙うのは倍近くいる様だ 「てめぇら何もんだ!!何故俺達を狙う!!」 「貴様に用などない去ね」 低い声は恨みがましい因縁を溜め込んだ物だった
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