文久三年【冬之弐】

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    その日の夜は武蔵の外れで旅籠に入った 一週間殆ど黙っていた早阪透は堪り兼ねた様に湯浴みから戻った本庄祿に問い掛けた 「師匠、俺達、京都に戻れるよな?ちゃんと野口を連れて土方さんと会えるよな?」 「会えるよ、そんなに心配するな…大丈夫だから」 何処にも保証など無い だけど、そう言わなければ本庄祿自身が不安に押し潰されそうなのだ 「ごめん…師匠」 本庄祿が何と答えるか位早阪透は分かっていた 間違っても自分を不安にさせる様な事は絶対に言わない 今の様にいつもの笑顔で頭を撫でて大丈夫だと言ってくれる 分かっていて聞く自分は最低だと理解している こんな事になったのは自分の所為なのに、本庄祿に安心を求めるなんて間違ってる 彼女の方がずっと傷付いているのに それでも甘える自分は弱いと思い知らされる 「透が謝る事なんて何も無いんだよ」 「そうやって優しくすんなよ…あんま俺の事甘やかすなよ……師匠がそんなに強く無い事俺知ってんだよ、本当は泣きたいのに、そんな顔して笑ってんなよ!!」 頭を撫でる右手を掴み強く引き寄せると余りにも簡単に腕の中に全て納まった
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