文久三年【冬之参】

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    掴んだ手首は細くて風呂上がりな筈なのに少し冷たかった マジでびっくりしてるみたいで師匠は動かなかったけどお構い無しに抱き締めた 首筋から覗く肌はすげぇ白くて石鹸とかボディーソープとか無ぇのに良い香りがした 別に今まで気にもしてなかったけどいつも師匠はこの香りがする だけど、それよりももっと気になったのは 師匠ってこんなに小さかったっけ? 「と…透!?」 あ、声が裏返った メッチャ恥ずかしがってる 「何?放さねぇからな?」 「馬鹿か、ふざけてないでないで放せ!!」 掴んだ右腕を何とかしようと藻掻いてるけど着物の袖ごと握っているから意味は無い 師匠を困らせようとか怒らせようとか思った訳じゃねぇ、ただあんな顔で笑う師匠を見るのが堪えられなかった だから結局は俺の我が儘 「師匠は俺の前じゃもう泣けない?俺じゃ野口みたいに支えてやれない?」 正直に言えばずっと野口に嫉妬していた いつも当然の様に師匠の傍に居て当然の様に師匠を守っていた 其処は俺や幸人や慎一郎や流星が目指していた居場所だったのに野口はたった数ヶ月で手に入れた 俺がガキだから? 俺が師匠より六歳も年下だから? 俺が弱いから? なぁ師匠…俺、本当に師匠の事大事なんだよ? 分かってんのかよ 「透、お前、何にも分かってないよ」 腕の中から抜け出そうとしていた体は大人しくなり俺に寄り掛かっていて、着物越しの体温が心地よかった
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