文久三年【冬之参】

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    「ふざけんな!!自分が何言ってんのか分かってんのか!?」 咄嗟だった 瞬間的に違うと判断した 新撰組を棄てて水戸に行く事をじゃない 現に俺はそっちの方が長く師匠に生きてて貰えそうな気がしていたから ただ、俺がキレたのは師匠の口から新撰組を棄てると言う言葉が出た事だ そんなん間違ってる 師匠は絶対新撰組を棄てたりなんかしない 師匠は、いつだってその小さな手に入れた物を途中で投げ出す様な事はしなかった 俺だって新撰組は大好きだ 皆いい人ばっかだし、剣も強くて真っ直ぐだ でも、歴史と呼ばれる新撰組の未来を知ってる俺にはどうしようも無い位に辛すぎて… 無力な俺は、そんな大きな物背負えない 俺一人じゃ新撰組をどうにかしてなんてやれない、自分を守るのが精一杯でそれでも俺一人犠牲になれるのは師匠の為だけだから だからせめて、未来を知っていながら助けられないなら今の内に新撰組を離れたかった 平成で育った俺は誠の為に命を懸けられる様な武士では無いから “逃げ”を当然の様に使ってきたから 「じゃぁ、野口殿を連れて又京に帰ろう…透、未来は変わるよ…絶対に変わる、沖田さんだって死なない、近藤さんだって、土方さんだって藤堂さんだって皆、新撰組は絶対敗けない、透が私と居たいと言ってくれるなら私は叶えて見せる…大丈夫……大丈夫だよ透」
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