文久三年【冬之参】

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    「貴様名乗れ!!何者だ!!水戸徳川公の御前での狼藉只では済まさぬぞ!!」 何十人もいる中で一番偉そうな奴が刀を抜くと切っ先を師匠に向けた 分かってる、師匠は強い でも、師匠に刀が向けられたのを初めて目の当たりにして思った こいつ等ぶっ殺すだけじゃ足んねぇ… 師匠との約束の手前、深く深く呼吸を繰り返して何とか落ち着こうと試みたけど中々思うようにいかない 「納刀しろ無駄な殺生に興じない…先文無く参った我々の非、越後より本庄が参ったと慶篤に伝えて頂きたい」 師匠は俺の乗った馬を撫でながら静かにもう一度名乗った 俺の乗った馬は俺の怒りが伝わって興奮し始めている 「……今、な、何と言った」 「同じ事を二度も聞く者に用は無い…」 「ま、待たれよ!!道を開け城内に御案内差し上げろ!!遠方越後よりわざわざ本庄様が御足労なされた!!」 偉そうな奴は急に真っ青になると回りの奴等に指示を出して全員大慌てで城内を駆け出した 俺にはさっぱり訳が分からないけど、師匠はニヤリと俺を見て笑った うわぁ…性格悪い笑い方…絶対何か企んでる
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