文久三年【冬之参】

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    「何?」 「あんたが何で水戸に来たか俺には分かる、師匠は俺とあんたが似てると言った、確かに考え方はすげぇ似てると思う…だからこそ俺と似ているあんたが嫌いだ、あんたが俺に言ったんだろ手放すなって…なのに何であんたは手放したんだよ!!全然説得力無ぇんだよ!!大事なもんは何があっても放しちゃなんねぇっつったのあんただろ!!離れる事が良い事なんて俺は無いと思ってる、離れて見ている事が師匠の為だなんて絶対言わせねぇからな!!」 俺は師匠の右腕を力一杯握り締めて怒鳴った 「小僧、どうせ貴様も此奴に使われて棄てられるのだ、この者の様にさっさと帰参した方が利巧だぞ、それとも小僧、お前も私の藩に来るか?」 「…んだと」 野郎……… 「違う」 「え?」 「何?」 「…野口、殿?」 否定をしたのは 野口だった 「本庄は、そんな事しない…本庄は絶対早阪を棄てたりしない」 「…貴様、私に楯突く気か」 徳川慶篤は俯く野口を睨んで指を差す 「私は……本庄を知ってる、馬鹿みたいに優しい奴だ…私の為に傷付いてくれる奴だ、だから…笑ってほしかった、早阪の傍に帰してやりたかった…なのに、何故こんな所まで来たんだ、私はもう、お前に何も望んじゃいないのに…」 「俺とあんたの所為だよ、師匠が体に無理を圧して此処まであんたを迎えに来たのは俺とあんたの所為だ」 「貴様、一度為らず二度迄もこんな餓鬼共如きの茶番で主人である私に恥をかかせる気か…」 「黙れ…私は、私はお前のものじゃない!!」 野口ははっきりとそう言い切った
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