文久三年【冬之参】

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    「何だと貴様!!自分が何を言ってるか分かってるのか!!」 「私は、本庄を守りたくて此処へ戻って来た…でも、此れが間違っていたなら私はどうしたらいい…本庄、私はどうしたらお前を守れる?どうしたらお前は笑ってくれる?お前は一体私に何を望む…」 「戻ってきて下さい…私の願いはただそれだけです」 「お前の望むままに…」 野口は師匠の左手をそっと握った 「貴様等この徳川慶篤をこけにしおって…只で済むとなどと思ってはおらんだろうな…」 刀を握る徳川慶篤に向かって師匠は一歩前に出た 「ならば、貴様は徳川十本刀に喧嘩を売って只で済むと思っているんだな?…水戸藩第十代藩主徳川慶篤、七日後江戸城への召喚を命ずる辞する事は皆無」 師匠は静かにそれだけ言うと歩きだした 俺と野口は黙って着いて行く 侍達は遠巻きに俺達をみていたが呼び止める者もいなかった 野口の案内で馬小屋に行き乗ってきた馬を連れ城を出る 外は夜で真っ暗だった 城から大分離れた田舎道、無言で前を歩いていた師匠は突然立ち止まり振り返った 暗くて表情まで見えなかったけど足早に歩いて来て パン!! 乾いた音が夜にこだました 「私が、どれだけ心配したかわかりますか?」 師匠は震える声で野口に問い掛ける 師匠に叩かれた野口は目を白黒させながら師匠を見ている
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