文久三年【冬之肆】

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    どのくらいそうしていたか分からない ただ、泣き声が静かな寝息に変わったのが未だ離れない小さな体から伝わり、起こさない様に静かに抱き抱え二階へ上がった 部屋は行灯の光も大分弱く早阪は布団に入っていた 「…起きているんだろ早阪」 「…寝てんだろ、見て察しろよ」 不機嫌そうな声から布団に隠れた表情は容易に察する事が出来た 「行かせてくれてありがとう」 「勘違いすんじゃねぇよ、あんたの為じゃねぇ、師匠があんたを待っていたから行かせたんだ…じゃなきゃ誰が他の奴なんて…」 「それでも…ありがとう」 「うっせぇよ、寝れねぇだろ…つうか、今日だけだからな、ベタベタ師匠に触んなよ!!あんたは嫌いじゃねぇけど師匠はやらねぇからな」 早阪は半ば小声で怒鳴ると頭まで布団を被った 「…私も、譲れないな」 バサッ 「…え?」 すごい勢いで飛び起きると早阪は私を見ていた 「私も…きっとお前と同じ気持ちで本庄を守りたいんだ、だから、譲れない」 「…てめえ………上等だ」 睨む口元に僅かに笑みが浮かぶ 「………ってか早く師匠を降ろせ!!いつまで抱いてんだ!!」 「ふっ…悔しいか?残念だが本庄が抱き付いていて無理矢理離すのは可哀相だろ?」 挑発的な笑みを見せると案の定 「うるせぇ!!いいから降ろせ!!今すぐ降ろせ!!師匠から離れろ!!」 乗せられ保さは折り紙付きの様だった 「…ん……うるせぇんだよ…餓鬼共」 「………」 「………」 こいつ、寝言で私を餓鬼扱いした 寝言も腹立たしいが餓鬼? 「早阪、本庄は幾つだ」 「二十二、二月で二十三」 「こいつ私より歳上だったのか」
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