文久三年【冬之伍】

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    野口は私の左腕を掴み振り向かせ両肩を掴んだ 「野口殿がご自分で土方副長にそう申し上げたと伺っていますが」 「私が?」 「てめえが自分で俺に言ったんだろうが、自分の事は本庄に全て預けてあるって」 「…は?、いや確かに言った、だが、私は!!」 「いやもだがもいらねぇんだよごちゃごちゃうるせぇ男だな、てめえは元新撰組局長芹沢に棄てられ新撰組本庄に拾われた、拾ったのは本庄でてめえもそれを認めた、だからてめえの身の置場は本庄のとこだけなんだよ、本庄が新撰組を脱すればてめえも新撰組じゃねぇ、てめえが帰る場所はその女と餓鬼のとこだけだ」 何度聞いても偏屈の屁理屈こじつけにしか聞こえない 現に野口は茫然と土方さんを見ている 「と言う事らしいですよ、それとも何処か行きたい場所があるんですか?」 私はわざと意地悪く聞いてみた 「お前の傍の他にあるとするなら地獄だな」 色んな事を諦めた様な笑い方をして野口は私を離す 「又大層な場所ですね…その時は流石に透は連れていけないので私一人でお迎えに上がりますよ」 ため息混じりに笑うと凄い勢いで野口が振り返る その表情は何とも言えない驚愕や怒り、悲しみがない混ぜにになって最後に優しい笑みを見せ 「………お前だけを…待ってる」 そう言って私の頭を撫でた 「畏まりました」 私は少し笑って頭を下げた どんなに遠くたって何度だってこの命が幾ら削れようと 絶対に手放すものか 絶対に諦めるものか 大切なものを絶対に守り通す これが狗の意地だ その為に狗になったんだ
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