文久三年【冬之伍】

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    「では、私と土方副長はこれから最後の一仕事があります、野口殿、透を連れて先に上洛して下さい」 私は透の背中に手を添えて野口の方へそっと押した 「師匠、まさか、徳川慶篤と…」 「本庄、私も行く、あれは私の責任だ!!」 分かっていたけど二人は素直に返事はしなかった 酷な言い方だけど事実だ 「二人は連れていけない、身分が許されないんだ、それに慶篤が喧嘩を売ったのはこの私だ、私が買う、余計な手を出すな、先に帰れ、分かったな?」 「何日…」 「二十日」 透は一言だけ呟き私が返すと野口の袖を掴んで先を歩きだした 「おい、早阪!!おい離せ!!」 「師匠が行けっつったんだよ!!だけどな、二十日過ぎてみろ帰って来なかったら俺は一人でも此処に戻って来るからな!!ずっと待ってるなんて俺は二度としねぇからな!!」 透は野口の着物を掴むと怒鳴った…まるで私に怒鳴る様に そして、二人は歩きだした 少し先で山崎さんは行商から薬屋に姿を変えて背を向ける 「本庄、これ」 土方さんは三人が完全に見えなくなると少し大きな風呂敷包みを渡された 「ありがとうございます」 「一体何を仕立てたんだ?呉服屋にやたら頭を下げられたぞ」 私は土方さんに水戸へ行く前の別れ際、一つ頼み物をしておいた 「ただの紋付き袴ですよ」 これで逢える やっと逢える
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